歯科医師が解説する、あごの下の筋肉と飲み込み

歯科医師が解説する、あごの下の筋肉と飲み込み

最近、食事中にむせることが増えた、声が少し出しにくくなった気がする——。年齢を重ねるにつれて、そんな小さな変化が気になり始める方は少なくありません。口元やフェイスラインの印象と同じように、「飲み込む」「声を出す」といった口まわりの働きも、毎日の使い方の積み重ねで支えられています。

シリーズ「世界のOMT」では、世界の口腔機能のトレーニングの考え方を、歯科医師の視点からご紹介しています。今回ご紹介するのは、アメリカで生まれた「息を吐く力を育てる」方法です。

小さな笛のような道具で「フッ」と吐くだけ

この方法では、小さな笛のような道具を口にくわえて、フッと強く息を吐きます。たったそれだけの練習ですが、お腹の筋肉と一緒に、あごの下にある筋肉も働きます。

あごの下の筋肉は、飲み込むときにのどを持ち上げる筋肉です。つまり「吐く」練習が、「飲み込む」ときに使う筋肉を同じように動かしてくれる、という考え方です。あごの下は、フェイスラインの印象にも関わる場所。口元の働きと見た目の印象が、実はつながっていることがわかります。

研究でわかっていること

研究では、この練習を週5日、4〜5週続けると、息を吐く力と咳の力が確かに強くなることがわかっています。

一方で、飲み込みについては「良くなる」というより「落ちないように保つ」効果が報告されていて、すべての方に同じ効果があるわけではありません。病気を治すものではなく、いまの力を大切にするための練習だと思ってください。

道具を使うときのポイントと注意

強さは「いまの力」に合わせて

道具を使う場合は、最初に「いまどのくらい吐けるか」を測って、その半分から三分の二くらいの強さに設定します。週に一度測り直して、少しずつ変えていきます。いきなり強く設定せず、ご自身の力に合わせることが大切です。

始める前に相談してほしい方

お腹の手術を最近受けた方、血圧が高い方、耳や肺に不安がある方は、始める前に主治医やかかりつけの歯科医師にご相談ください。また、練習中にめまいや頭痛があれば、その日はお休みにしましょう。

今日からできること

道具がなくても、今日から始められることがあります。

  • 椅子に座って、背中を軽く伸ばす
  • 唇を閉じたまま、鼻でゆっくり息を吸う
  • 唇を小さく開けて「ハッ」と短く吐く(頬をふくらませないように)
  • これを5回くり返したら、あとは鼻で静かに呼吸して休む
  • できない日があっても構いません。むせた回数や声の出しやすさを、ときどきメモしておく

気になる変化が続くときは、メモを持ってかかりつけの歯科医院や医療機関に相談してみてください。

まとめ

「吐く」というシンプルな動きの中で、お腹の筋肉とあごの下の筋肉が一緒に働いています。特別な力を手に入れるためではなく、いまの力を大切に保つための、毎日の小さな習慣。完璧を目指さず、できる日に、できる回数だけ続けていくことが何より大切です。

あごまわりや口元に触れる習慣と合わせて、乾燥しやすいこれからの季節は、肌をこすらないやさしい保湿ケアも取り入れてみてください。

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参考文献:
Wheeler KM, Chiara T, Sapienza CM. Surface electromyographic activity of the submental muscles during swallow and expiratory pressure threshold training tasks. Dysphagia. 2007.
Troche MS, Okun MS, Rosenbek JC, et al. Aspiration and swallowing in Parkinson disease and rehabilitation with EMST: a randomized trial. Neurology. 2010.
Plowman EK, Tabor-Gray L, Rosado KM, et al. Impact of expiratory strength training in amyotrophic lateral sclerosis: results of a randomized, sham-controlled trial. Muscle & Nerve. 2019.

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